アイゼン・カンバック
そういえば、アイゼンの話を書いてなかっ
た。ちょっと前のスイスの山/アイガーを
登っての帰り道、もう最後というところで
平坦の雪原だからアイゼンは脱いでザック
に付け乾かしながら帰ろうと思い適当にザ
ックに付けて歩いてました。
普段人ごみや公共の乗り物などに乗るとき
は、私はいままで絶対にザックに付けない
のを信条としてきました。ガイド検定でも
そうでした。ヨーロッパでロープウェイに
乗るときは必ず背負っているザックを降ろ
してピッケル・ストックは手に持つように
アナウンスがあります。移動しているとき
そこには子供もお年寄りも身体の不自由な
人もいます。ザックに付けているアイゼン
ピッケルは凶器になっていることを山に入
る人は理解しなくてはなりません。
で、話はもどして誰もいない雪原だからこ
こは良いかなとザックにアイゼンを付けて
ユングフラウヨッホまで戻ってくると、な
んとアイゼンが片方無い。暗いうちからア
イガーに登って降りて歩きてきた私には戻
って探す勇気がありませんでした。まだこ
れからだという時にアイゼンがなければ仕
事になりません。仕方なくこちらで新しい
のを買うかと思って諦めてアパートに帰っ
たのでした。
アパートに帰ってからこの日はグリンデル
ワルト在住の友人がアイガー登頂祝いに駆
けつけてくれました。嬉しい話です。日付
が変わるまで呑み明かした時、自分のしで
かしたお粗末なアイゼンの話もしながらワ
インを飲んだのでした。
そして、次の日友人ガイドがちょうどユン
グフラウヨッホのハイキングでした。私が
落としたかもしれない場所に差し掛かった
時ハイキングしながら一生懸命探してくれ
たようでした。(お客さんの話)そしてメ
ンヒヨッホ小屋で休憩中にCTのアイゼンを
見つけ「これは」と尋ねると先日の落とし
物だとのこと、彼はすぐに私の連絡を取り
アイゼンのメーカーはCTですかと聞いてき
ました。私は奇跡のような気持ちでそうで
す、その通りです。
人の気持ちに触れた瞬間でした。いままで
厳しいことばかりだった私はジーンと目頭
が熱くなりました。一年に一度会うか会わ
ないかのスイスの友人が、自分自身戻って
探す気力もなかったアイゼンを真剣に探し
てくれたのでした。
その後マッターホルンやマルチクライミン
グを登った時も道を譲ったり、新人を助け
てあげたりとなぜか人に優しい自分がいま
した。いつまで続くことやら、、
でも本当に嬉しい出来事でした。
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